明け方、魔女っコ Lamiが、秘薬120ALLを抱えてムーングロウの森で修行をしていたときのことです。マナ回復待ちの間、レスリングのスキルを上げようと鹿と素手で殴り合いをしていると、馬に乗った人が私の側に寄ってきました。
その時、極度の眠気に襲われていた私は、「……包帯でも巻いてくれるのかしら?」とぼんやりした頭で思いました。が。しかし。私にぴったり寄り添うようにして立つその人は、名前が見事な灰色です。明らかに犯罪者です。
普通ならこの時点で気づいてもよさそうなものです。けれども、そのグレイネームはエスコートらしきNPCを連れていたので、
「NPC殺しでもしているのかしら。でも普通トラメルでやるよなあ。わざとグレイになってFPKKでも誘ってるのかしら。いやあねえ」
などと、私はつい深読みしてしまいました。
この時すでに、秘薬120コ×2種がごっそり盗まれておりました。
バックパックからするすると消えていく秘薬をぼんやり眺めながら、
「ああ、そうか。シーフか。なるほどねー」
と納得する私。その間にも、秘薬をサクサクとパクっていくシーフ。
──てめえ畜生。
このへんでようやく目が醒めました。……殴りてえ。しかしLamiたんの戦闘スキルはほぼ0に近いので、返り討ちにあうのは必至。肝心の秘薬を盗られてしまっているので、魔法で攻撃することもできません。なすがままです。
このままでは秘薬が全滅してしまいます。私は舌打ちしながらその場をはなれ、Lamiを宿屋でログアウトさせると、すかさず戦士Ramiにキャラを変えました。銀行からD毒カタナとHQハルバードを持ち出し、再び森へ向かいます。殺る気まんまんです。
さきほどのグレイネームはすぐに見つかりました。何気なさを装いつつ近づこうとしたものの、ヤツは私の姿を見るなり、ダッシュで逃げてしまいました。
…………バレてる? 同一人物だってバレてる?
LamiとRamiじゃ、あまりにもわかりやすすぎるんでしょうか。追いかける気力もなく、私はひとりD毒カタナとHQハルバードを握りしめたまま、さみしげに森の中に立ち尽くしていました。
ちえ。つまんないの。
2000/06/03
シーフの横行するフェルッカ世界での魔法訓練は危険だと判断した私は、LamiとRamiのふたりを安全なトラメル世界へ一時避難させることにした。
狩り場も街もフェルッカ側の方が空いているので、トラメルに赴くことはほとんどなかったが、まあ修行のためなら仕方ない。
ムーングロウの森でばしばし魔法を撃ちまくっていると、akagiねえさんを発見。わあ。偶然偶然。以前いっしょに狩りをしたnoriさんと墓場で狩りをしているというので、私も混ぜてもらうことにした。
柵の外から魔法を撃ち込み、スキル上げ。安全だしとってもらくちん。
夢中になって狩っているうちに、窓の外が明るくなっていた。ああ、また朝が来てしまった。リッチ目当てに墓場に居座っていた、たくさんの人の姿ももうまばらになっている。
「あ、この時間ならアレができるかも?」と思っていたら、できました。朝の墓場のおたのしみ。
【サイン会のようす】
もしくは【開場は10時からです】
この後、さらに倍近く数が増えて大変なことになっていた。