明け方、ヒマだったので、所用を済ませにウィンダスに行くことにした。
港で飛空挺を待っていると、見知らぬ猫ちゃんが、なにやら俺にすげえメンチ切っている。……なんだよ。俺のカッコがかわいいからって、そんな見つめるなよ。「調べる」にフィルタかけてるからわかんないけど。
と思ったら本当に「調べる」してたらしく、「その杖はどこで手に入れるの?(英語)」と、コウモリ杖の入手方法を聞かれた。「2003年のハロウィンのイベントアイテムなんだよ」ってことを単語で伝えると、「そうなんだ、おめでとう^^(英語)」……感じのいい異国の猫ちゃんだ。
その後、飛空挺内でぼーっとしていると、さっきの猫ちゃんが「黒魔道士AFのコッファー鍵取りを手伝ってくれませんか?場所は要塞です。15000ギル払います(英語)」と言ってきた。猫ちゃんは黒魔だったのだね。ブラクロ姿のぼくを見て、高レベル黒魔なら力になってくれるかも!と思ったのだろうか。
うーむ。異国の黒猫ちゃんが困ってらっしゃる。しかもきっちり報酬は支払うとか言ってる、感じのいい黒猫ちゃんだ。金なんか抜きにして、同種族の同ジョブとして力になってあげたいんだが……要塞のカギ落とすやつって骨とかボムとかエビだよな?70から楽~練習くらいだろ?火力は足りるけど、私が耐え切れずに死にそうだよな……。
「手伝ってあげたい。でも黒魔道士 とてもとても打たれ弱い。そりゃもう自分でびっくりするほど。高レベルのナイトか戦士か忍者かモンクが必要です」と、片言の英語で伝えると、「じゃあ、私があと1人、tankを見つけてきたら手伝ってもらえますか?(英語)」ときた(ああそうだよそのtankって言葉が使いたかったんだよ畜生)(なんでとっさに出てこねーんだよ)(てか『前衛』ぐらいタブ変換にいれとけよ)。
ああ、そりゃもちろん。いいよヒマだし……「I got lvl 68 PLD^^」って仕事はええなアンタ!
そんでウィンで用事をすませてから要塞に行き、なんだかんだで高レベルの前衛が3人も揃ったので、スキル上げかねてカギ取り。なつかしいなー要塞。気をつかって離れてコンバした赤のヒットポイントに、遠くの骨が鬼の速さですっとんできたりしたっけなぁ……。前に出ると自分とこの骨の範囲にあたって、後ろに下がると隣PTの骨の範囲にあたって、後衛3人で安息の地を求めておろおろしたっけなぁ……。
などと思い出に浸りつつ、異国のにゃんこちゃんと異国の前衛くんと片言で会話……してるフリ。うーん。やっぱ半分も理解できねえ。気をつかってすごく簡単な英文で話してくれてるのはわかるんだけど、理解不能な単語が1コ2コ混じると、途端にわけわかんなくなる。英和辞典と和英辞典、こないだ捨てちゃったんだよなぁ。翻訳サイトで調べられるからいらないと思ったんだけど、早まったなぁ。強制全画面固定のFFやってると、ネット使えないもんな。せめて辞書あればもうちょいスムーズに意志の疎通が……。
あ!そうだ、そーいえばキッチンに一冊、同居人の英和辞典があったような気がする!なんか白い表紙のやつ!……あった!おお、がっつり英和辞典だ。よっしゃ、これでよりいっそうカタコトカタコト言わせちゃうぞー!
と意気込んだまではよかったんだが。
……っかしいな。なんだよこの辞書。日常会話レベルの単語もまともに載ってねえのかよ。おっかしいな……この人たちのスペル、微妙にイギリス英語だったりスラング入ってたりすんのかなぁ?んなこたぁねーよなぁ。つーか、イギリス英語なら普通に載ってるよなぁ。うーん困った。しかも和英辞典じゃないから、こっちの言いたい言葉が探せねーし。
せっかく見つけてきた辞書も意味がないまま、相変わらずわかんない単語は「???」で、カタコトカタコト。ははあ、ジョブチェンジて「switching job」って言い方すんの?へぇーへぇーへぇー。勉強になるなー。一晩寝たら忘れそうだけどー。
──私が見つけてきた白い表紙の辞書がフランス語辞典だったことに気づいたのは、無事にカギがドロップしてからのことだった。超ファック。